光栄にも、2013年度の TEDxRyukyu に登壇する機会を頂けたので、
沖縄で実施している教育プロジェクトのアイデアを共有させて頂きました。発表内容は後日
公式HPにて公開されるとのことなので、具体的な内容はそちらでお楽しみ頂けたら、と思います。
今回は、発表内容についてではなく、TEDxRyukyu に登壇して学んだ
専門分野を超える難しさと
その価値について書きたいと思います。というのも、今回の登壇を通して、自分が如何にぬるま湯に浸かっていたのかを痛感したからです。
1. 同じ分野の人達と話すと心地よい
専門分野で学んだことを、同じような分野を習得した人達と共有することは楽しいです。例えば、僕は Computer Science を専攻していたので、同じ分野を専攻した人であれば、ネット上で流行っている造語や技術的な専門用語を会話で使っても、理解してもらえることが多いです。また、専門分野が同じであれば、興味や関心の対象が似通っていることも多いので、共通の話題を見つけやすく、話が尽きることもありません。
次のプレゼン資料は、その典型的な例です。このプレゼン資料が使われた
xHago というイベントの参加者であれば、ほとんどの方は楽しんでもらえるんじゃないかと思います。一方、そうでない方々にとっては、あまり面白くない内容だと感じられるかもしれません。
好きな表現方法で何かを伝えられると楽しいです。また、その内容を理解してもらえたら嬉しいです。当然、そうやって快適にコミュニケーションができるコミュニティは、居心地が良いです。
2. 専門分野を超えて伝える難しさ
しかしながら、TEDxRyukyu のような場では、先ほどのプレゼン資料のような表現は全く通用しません。というのも、同じ分野を専攻している参加者はごく少数で、そうでない参加者の方が、圧倒的に多いからです。
いつも使っている用語や表現を使えないことは辛いです。いつもなら、専門用語を使ってアイデアを短いフレーズで伝えたり、鉄板の表現 (例えば、話題のキャラクターのセリフを引用したスライドなど) を使って場を和ませたりすることもできますが、TEDxRyukyu のような場では、そういった手法が一切使えなくなります。このため、発表で使う用語や表現を丁寧に吟味し、それらを平易な表現に変換する必要がありました。
とはいえ、発表内容を平易で抽象的過ぎる表現にするのも考えものです。なぜなら、あまりに抽象的すぎる内容になれば、TED/TEDx で禁止されているエセ科学的な内容になったり、あるいは「結局、何が言いたかったの?」と思われる内容になってしまうからです。一方で、具体的な内容に踏み込みすぎると、話についていける人はごく少数になっていきます。この抽象度のバランスを調整する作業が難しかったです。
率直に申し上げて、こういったバランスを調整する作業はあまり楽しい作業ではなかったし、
実際、発表前の僕はテンパっていたようです。また、僕自身、プレゼンテーションの練習をしながら「これが、もしIT系の勉強会だったなら...」と何度も考えました。自分がいつもいる快適なコミュニティを飛び出し、分野を超えてアイデアを伝えるということは、このような負荷が伴います。
3. 専門分野を超えて伝える価値
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Photo by Keita Teruya |
それでも、専門分野を超えて伝える価値はあると僕は信じています。専門分野を超えた協力関係が、新しいアイデアや新しい手法を生み出し、そして、インパクトのあるプロジェクトが生まれると、経験を通して実感しているからです。
例えば、次のプロジェクトは、翻訳者 (当時) である八田さんという方と、開発者である自分とが、互いの専門分野を超えて共同で立ち上げたプロジェクトです。
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Rails Tutorial 翻訳プロジェクトの紹介スライド |
「
翻訳x開発」が組み合わさって立ち上がったこの翻訳プロジェクトは、650ページもある大型本を、たった1ヶ月で完成させるに至りました。このプロジェクトの成果物である
Rails チュートリアルは、企業や勉強会の題材として使って頂き、現在も、国内の多くの開発者に読まれています。実際、この分野横断的なプロジェクトから生まれた新しい翻訳手法 (Social Translating) は高く評価され、11月21日〜22日に行われる
RubyWorld Conference の講演テーマとして採択されました。
これは、翻訳の経験と開発の経験とが、うまく組み合わさってできた成果の一例だと僕は考えています。
TEDxRyukyu は、このような分野を超えたプロジェクトを生みだす、土壌なのではないかと考えています。専門分野に留まり続けることは心地が良いし、分野を超えてアイデアを伝えることは、簡単ではありませんでした。それでも、上記のようなプロジェクトが生まれる可能性があれば、僕は分野を横断してアイデアを伝え合う価値は十分にあると信じています。そして、それが僕にとって TEDxRyukyu に登壇するモチベーションでした。
僕のプレゼンテーションがどれほど TEDxRyukyu に貢献できたのかは分かりませんが、それが分野を超えて対話することを促せたのであれば、大変嬉しいです。
最後に
1つ心残りな事があるとすれば、僕は翌日に
子供・学生向けの Digital Fabrication のワークショップがあったので、After Party に最後まで居られなかったことです。400人以上もの来場者がいながら、僕が直接対話できた人は100人もいません。それが心残りです。
僕は
Facebook や
Twitter、
個人サイトも持っているので、もしよければ Facebook Message や Mention/Direct Message などでお気軽にお声かけ頂けたら嬉しいです。何か面白いプロジェクトに繋がれば嬉しいな、と考えています。よろしくお願いします。